最新テクノロジーの導入には慎重だと考えられていた業界で、IT分野の契約労働者の需要が急増しています。銀行やエネルギーなどの伝統的なセクターは、デジタル革命のはるか以前から存在していましたが、現在ではIT人材への需要が大きな高まりを見せており、大手テクノロジー企業との間でIT人材の獲得競争が起きています。
こうしたセクターの企業が、効率化や競争優位性を求めてデジタルトランスフォーメーションを加速させているため、契約労働者の報酬が大幅に上昇しています。オールドエコノミー企業がテクノロジーを活用して経営を強化し、カスタマーエクスペリエンスを向上させ、イノベーションを推進しようとしているのです。このため、データ分析、サイバーセキュリティ、人工知能などのIT分野における優秀な人材と専門知識が求められるようになっています。
私がビジネスの拠点とするオランダでは、2023年1月から3月の間に、需要が高いIT分野の契約労働者の平均報酬が3.5%上昇しています。現在、ITのリーダー職や戦略担当者は1時間あたり平均92.08ユーロ、ビジネス情報、データサイエンス、ソフトウェア開発などのスキルを持ったプロフェッショナルは88.80ユーロの報酬を期待できます。
加速するデジタルトランスフォーメーション
大手テクノロジー企業以外でも、オールドエコノミー企業、特に銀行セクターやエネルギーセクターで採用熱が異常な高まりを見せています。当社がオランダで第1四半期に紹介した人材の50%は、この2つのセクターで占められています。3番目に多かったのは小売セクターです。デジタルトランスフォーメーションが継続しており、採用はさらに増えることが見込まれるため、テクノロジー分野のプロフェッショナルにとってこれらの業界には将来性があります。当社においても、紹介の大きな割合を占める業界になっています。
その理由の1つとして、厳しい経済状況と予算の引き締めが挙げられます。これまで大手企業をサポートしてきた専門のシステムインテグレーターに対する当社からの紹介は、現在減少しています。代わりに、企業がSThreeや当社の各ブランドに直接連絡を取り、個人の契約労働者の紹介を依頼する場合が増えています。この方法によって、企業は大幅なコスト削減が可能になります。
メリットは他にもあります。当社はニッチな専門スキルを持った候補者の獲得に特化しており、大半のシステムインテグレーターよりも幅広く多様な人材プールを確保しています。また、人材調達、スクリーニング、選抜について厳格なプロセスを設けています。
今後のテクノロジー人材採用のトレンド
SThreeは、将来的なテクノロジー人材の需要の発生源についても独自の視点を持っています。報酬は現在のところ上昇していますが、当社は採用市場における変化の兆候を常に監視しています。短期的には、テクノロジー分野の契約労働者の需要が最も高いのは、銀行セクターとエネルギーセクターであると当社は予測しています。
食品・飲料、旅行などその他のオールドエコノミーセクターも、新たなテクノロジーに投資する必要に迫られています。例えば、人工知能や機械学習の導入がさまざまな業界で加速し、小売業や製造業ではモノのインターネット(IoT)の人気が一層高まっています。以下のようなテクノロジーの専門人材も供給が追い付いていません。
- 5Gネットワーク
- 量子コンピューティング
- 仮想現実や拡張現実
- ブロックチェーン
- サイバーセキュリティ
高い報酬を支払ったとしても、契約労働者は雇用主にとって依然として費用対効果の高い選択肢です。そのため、雇用主は契約労働者の価値を知る必要があります。高い報酬を得ることに加えて、革新的なプロジェクトで最新テクノロジーを使って働き、人材市場における自分の価値を維持したいという希望も契約労働者は持っています。柔軟なリモートワークは、今後も契約労働者が求める要素の1つでしょう。そのため、雇用主はこうしたニーズに真剣に対処し、優秀な人材を引きつける必要があります。
需要がすでに供給を上回っている
金融サービスセクターでの需要が増加している原因は、競争の激しさでしょう。金融サービス企業は世界で最も競争の激しい市場を勝ち抜かねばならず、サイバーセキュリティへの取り組みも極めて重要です。つまり、最新のテクノロジーを迅速に組み込み、スムーズに機能させる必要があるのです。銀行にとって、オンラインバンキング、モバイルアプリ、金融テクノロジー(フィンテック)のイノベーションを実現するためにテクノロジーは欠かせません。
銀行やその他の金融サービス企業が労働力の柔軟性を維持し、変化するビジネスニーズに迅速に対応するうえで、契約労働者は費用対効果の高い人材です。契約労働者は、新しいテクノロジーやアプリケーション、最新インフラの開発など、必要に応じて特定のプロジェクトのために雇用できます。また、より広い世界から新鮮なアイデアをもたらしてくれる場合も多いため、新たなソリューションの開発にもつながります。
エネルギー業界も、オペレーションの自動化・監視・最適化、再生可能エネルギー源の管理、スマートグリッド技術の実装など、デジタルトランスフォーメーションを推進しています。しかし、多くの企業があらゆる分野(クラウドコンピューティングからデータ分析ソフトウェア、サイバーセキュリティまで)のプロフェッショナルを求めているため、すでに需要が供給を上回る状態になっています。
銀行業界とエネルギー業界のいずれにおいても、イノベーションによって競争をリードする重要性が認識されています。優秀な人材を採用すれば、最新のテクノロジーを開発し、新たなデジタル製品を生み出し、プロセスを最適化できます。また、どちらのセクターにおいても膨大な量のデータが発生するため、そこから貴重なインサイトを得て、意思決定や戦略立案に活用できます。ただし、それにはデータを管理するデータサイエンティストが不可欠です。
コロナ禍とリモートワークの普及により、企業が世界各地のスペシャリストを雇うことは以前より容易になりました。現在、多くの企業がグローバルな人材プールを活用するようになっています。こうした変化により、従来は世界の中で低コストと考えられていた地域の契約労働者の報酬が上昇しています。例えば、ポーランドの契約労働者の一部は、ドイツの契約労働者と同じ報酬になっています。
求められる女性テクノロジースペシャリスト
テクノロジー人材の不足を解消する方法の1つとして、テクノロジー職に就く女性へのトレーニングの提供と雇用拡大が挙げられます。現在のテクノロジー人材に占める女性の割合は、わずか25%ほどです。オランダに関する当社のデータによると、女性のテクノロジー人材は少数にとどまっていますが、各テクノロジー職における女性の分布は大きく異なり、設計や管理の46%から、DevOpsやクラウドの7%まで幅があります。スキルを持つ人材の不足を解消するために、IT職における女性の数を増やすことが必要です。
報酬が上昇しているオールドエコノミー産業がテクノロジー分野のプロフェッショナルにとって魅力的に感じられるのは当然ですが、こうした業界に対する見方が変わってきているという兆候もあります。
最近、米国でHandshakeが行った調査では、約1,000人の大学卒業生を対象にアンケートを実施すると同時に、インターネットでの検索結果の分析も行いました。2023年度の卒業生は小売、金融、製造業への就職を志向しており、その主な要因は、経済の不透明感、テクノロジー業界における解雇問題、AI技術への懸念でした。
テクノロジーは変化しており、オールドエコノミー産業は後れを取らないよう競い合っています。これは需要が高い契約労働者にとっては良いことですが、ITプロフェッショナルの雇用はますます難しくなっていくでしょう。SThreeは専門的な契約労働者のグローバルネットワークを有し、複雑なプロジェクトに取り組むために必要なスキルも深く理解しているため、人材採用の問題に悩んでいる企業からの注目が高まっています。
テクノロジースペシャリストの採用方法について、SThreeのグローバルブランドの情報をご覧ください。
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