5つのグローバルメガトレンドが、組織やコミュニティにおける人々の振舞い方に変化を及ぼしています。このような世界的な潮流を好機と捉え、必要な人材を獲得するためには、組織は今までとは異なる考え方を身に着ける必要があります。今後、官僚主義的な慣習による負担を軽減して活用されていない潜在的な力を生かすことにフォーカスし、既存の人材を定着させるためのさらなる取り組みに着手することが求められます。組織のそのような変化は、STEM業界のあり方を変え、世界中で見られる慢性的なスキルギャップを解消するうえで重要な役割を果たします。
STEM分野の専門知識に対する需要の急激な増加の背景には、グローバル規模で見られる5つのメガトレンドがあります。デジタル化、脱炭素化、ヘルスケアなどの分野に優秀な人材が集まっている一方で、新しいワーキングモデルと人口動態の変化によって、人材を雇用する企業や国家には課題がもたらされています。重要なスキルを持つ人材を惹きつけて保持するための有意義な対策を講じている企業は、未来の命運を握る重要な市場で競合他社をしのぎ、大きく躍進できる可能性があります。
官僚主義的な障壁が人材へのアクセスを妨げている
スキル不足が深刻化するなか、各国はイノベーションとデジタル化を推進し、グローバル規模でスキルや人材獲得に向けた競争を展開する必要があります。これまでにも多くの企業が人材獲得のための投資を行ってきましたが、短期間で投資効果を実感できるようにするためには、官僚主義的なプロセスを減らし、税制上の優遇措置を高める必要もあります。
税制上の優遇措置や政府による研究支援は、ビジネスを拡大させ、外国企業を誘致するうえで効果的です。企業がこうしたインセンティブのメリットを享受するには、従来のアプローチを変更し、従業員の要求に耳を傾け、より柔軟な経営モデルを採用しなければなりません。正社員ではなく、契約ベースで仕事をするコントラクター(契約労働者)をターゲットとすれば、変革を加速させ、市場機会に敏感に反応できるようになります。
しかし、これは簡単なことではありません。
契約労働者は事業を拡大させるうえで不可欠ですが、依然として厳しい規制の対象となっており、彼らの潜在能力を十分に活用できない現状があります。英国など一部の国で、契約労働者の税法上の地位は厳しい調査の対象となっており、個人事業主の状況は過度に複雑化しています。そのため、多くの人がキャリアの選択肢として、そのような就業委形態を断念せざるをえなくなっています。契約労働者がこのような問題を克服できるようにするには、企業がインセンティブを提供しなければなりません。この問題に取り組むことは困難かもしれませんが、複雑である必要はありません。
その手段の一つとして挙げられるのが、企業が雇用コントラクターモデル(ECM)を採用することです。ECMは、コントラクトベースで働く柔軟性と、正社員ポジションの雇用保障と福利厚生という両者のメリットを提供するモデルです。このモデルにより、企業と従業員は規制の重荷から解放されます。ECMコントラクターは、年次休暇や健康保険などの福利厚生のある環境で働きながらも、リスクを回避し、柔軟性を維持することができます。企業は、柔軟性があり、高いスキルを持つ人材プールにアクセスできます。そして当社が、業務管理やトレーニング、設備の提供を行います。
活用されていない人材を生かせる大きな可能性
ベビーブーマーの大量退職によって人口動態が変化し、スキルを持つ人材の不足に拍車がかかっています。このようにスキルの高いプロフェッショナル人材の不足が進行するなか、企業は従来の方法にとらわれず、需要の高いスペシャリストを探さなければなりません。より大規模でグローバルな人材プール、高年齢の労働者、従来とは異なるキャリアパスを歩んできた候補者について考える必要があります。ダイバーシティを推進し、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を惹きつける必要もあるでしょう。これらのアプローチはすべて、イノベーションと問題解決の新しい方法をもたらします。
企業はすでに、従来よりはるかに大規模な人材プールの恩恵を受けています。重要なスキルを持つ人材を世界中に求め、グローバル人材が自分の居場所であると感じられるような企業文化を創出しています。地域的な人材不足に見舞われている企業は、グローバル人材のホットスポットや地域の専門性を生かし、適切な候補者を特定して、募集中の求人におけるさらなる競争を促しています。
また、十分に活用されていないリソースとしては、高齢の従業員が挙げられます。専門知識や経験が豊富でありながら、早期退職を希望する可能性のある55歳以上の従業員を引き止めるための措置を講じている企業もあります。そのような人材の知識はもはや時代遅れになっているとの見方もありますが、さらなる教育や研修によって対処できる可能性があります。当社のクライアントは、若手のチームにベテランが加わることの素晴らしいメリットを実感しています。ウェルビーイングやメンタルヘルスにおける企業の役割に注目が集まるなか、こうした企業の多くは、マネジメントにおける人間的な側面や価値の重要性を一層強く認識しています。
多くの企業は、求人票にマッチした経歴を持つ履歴書を求め続けています。それはあまりにも非効率であり、有力な候補者を逃すことにつながります。先進的な組織は、よりクリエイティブに考えています。異業種から新たに加わる人材は、重要な役割を果たすだけでなく、イノベーションの原動力にもなることが当社の経験から明らかになっています。たとえば、テック大手企業が数年間の急成長を経て、最近になって人員削減を行っていることは技術系の求職者にとって衝撃的な出来事だったかもしれませんが、テック企業は異なるキャリアパスを提示し、これまであまり考慮されてこなかったオプションに光を当てることができるはずです。このような人員削減が行われているにもかかわらず、テクノロジーの専門性を持つ人材不足は世界的に続いています。他の分野の企業、たとえばライフサイエンスや脱炭素化に取り組む業界の企業は、AIや個別化医療の開発を促すテクノロジーのノウハウを持つ候補者の人材プールから人材を探し、採用する好機を捉えようとしています。
また、STEM業界は、女性を惹きつける取り組みを進めなければなりません。STEM分野全体で女性の数は依然として限られていますが、スキルギャップを埋めるために女性の人材は不可欠です。2030年にはICTスペシャリストの25%弱が女性になると予想されていますが、世界で19%という現在の数字と比較してもわずかな伸びにすぎません。実際のところ、多くの国で女性テック人材の割合は低下しています。
女性は、多様な考えや異なるアプローチを生み出す力になりため、よりインクルーシブな企業文化を推進することができるでしょう。教育機関との関わりや社内イベントなどで若い女性を動機付けることによって、私たちはさらに多くの女性のロールモデルを生み出すことができます。子育て中の女性のための柔軟性の向上、さらなる配慮、育児支援などはすべて、大いに必要とされています。保育施設の充実は政治家が議論するべき問題ですが、企業はたとえば、保育事業者とのパートナーシップなどを通じて、その一端を担うことができます。
文化、ケア、コンディションが人材定着の鍵
動きを見せようとする傾向にあるのは高年齢の従業員だけではありません。成功した企業がさらに発展するための最も効率的な方法は、需要の高いスペシャリストの維持に注力し、彼らのニーズを運用モデルの中心に据えることです。
プロフェッショナルが自宅とオフィスの両方で働くことができるハイブリッドのアプローチは、求職者が求める条件の上位に挙がっています。これによって、従業員はどの程度オフィスにいることを求められるべきか、オフィスにいる時間をどのように使うかといった問題が提起されています。現場で働く従業員の仲間意識は、オフィスの存在意義を示す分かりやすい例かもしれません。オフィスは、今後ただコラボレーションや創造性、イノベーションを加速させるためだけの場であるべきなのでしょうか?多くの従業員がリモートで働くグローバル化した世界で、従業員が集まって企業文化を構築し、コラボレーションを促進するための取り組みは今後ますます必要となるでしょう。
さらに、仕事の性質が変化することによる特有のストレスも生じており、組織にとって重要な社員のウェルビーイングへの注力がこれまで以上に重要視されています。在宅勤務を行う人は孤立感にさいなまれることがあることからも、従業員の心身の健康を確保することは優先度の高い課題となっており、企業はそのような人材に現実的な仕事量を与え、各個人が必要とするサービスを提供する必要があります。競争の激しい市場で、STEMプロフェッショナルは成果を出すことへのプレシャーにさらされていますが、彼らの成果を大きく左右するのはウェルビーイングです。多くの従業員は、リモートワークの柔軟性から、家族との時間や趣味の時間のや確保や通勤のストレスからの解放、集中できる環境作りといった様々なメリットを享受しています。一方で、すべての人がこのような環境で成長できるわけではありません。
不確実な時代において、企業は持続可能な採用戦略を策定する必要があります。必要なスキルを明確にし、どのような場で必要なスキルを持つ人材を獲得できるかを把握しなければなりません。このような戦略を適切に実行する企業は、人材獲得競争の勝者となり、新たなグローバルメガトレンドがもたらすチャンスを手にすることができるでしょう。
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