競争が激化する社会において、新しいスキルの習得は、キャリアアップを図り、STEMスキルの不足を埋めるための重要な要素です。とはいえ、新しいスキルの習得には時間がかかるため、他の日常的取り組みとのバランスを取るのが難しい面があります。マイクロクレデンシャルは、このバランスを維持しながらキャリア目標を達成するのに役立つツールです。
仕事の世界が進化し続ける中、STEM領域におけるスキルアップとリスキリングが極めて重要になっています。ここで役立つのがマイクロクレデンシャルです。マイクロクレデンシャルはほぼすべての業界に対応する多様なコースを提供しています。多くの雇用主が、マイクロクレデンシャルを通じたスキルアップを目指す雇用者をサポートしています。専門分野のマイクロクレデンシャルを実施することにより、キャリアの道筋を外れることなく、レジュメに記載できる新しいスキルの習得に時間を費やすことができます。
この記事では、マイクロクレデンシャルの利点について検討し、どこで利用できるのかをご紹介します。マイクロクレデンシャルが労働者と組織の双方にとって有用なツールであることをご理解いただけると思います。
マイクロクレデンシャルとは?
マイクロクレデンシャルは、選択した領域で新しいスキルを習得できる短期間のコースです。通常は4~20週間という非常に短期間のコースになっています。学習内容は多様で、テクノロジーからビジネス、教育、さらには調理技術までカバーしています。どの業界で働く人も、ご自分の専門分野のマイクロクレデンシャルが見つかります。
マイクロクレデンシャルは、オンラインでも教室でも、以下のような形式に従って実施されます。
- コース教材、セミナー、講義を通じた自主的学習。
- 学習した教材に基づく課題の実施。
- 習得した知識を実証するためのタスクまたはテスト。
- コース修了時に認定証またはメリットバッジを授与。
マイクロクレデンシャルは学位の代わりになり得るか?
マイクロクレデンシャルは従来の学位や職業資格の代わりにはなりません。しかし、組織で活躍する人材を奨励・育成する、優れたスキルアップの源となっています。マイクロクレデンシャルなら、フルタイムのコースを受講する時間がなくても、スキルや知識を向上させることができます。単に特定の分野での知識を深めたいという場合にも役立ちます。
マイクロクレデンシャルの人材採用への影響
期間が短く取得しやすいマイクロクレデンシャルのコースは、スキル不足を補い、幅広い人々に向けて機会を広げるものであり、人材採用のあらゆる要素に影響を与えます。
1. ますます競争が激化する現代の労働環境
今日の雇用主は、雇用者が特別な価値をもたらしてくれることを求めています。マイクロクレデンシャルをシェアすることで、特別なスキルを持っていることを示すことができます。職業上のプロフィールが強化され、迅速なキャリアアップや給与の増額につながります。
利用しやすいコースでスキルを習得し、STEMスキルなど、特定のニッチなテーマに関する知識を示すことにより、組織の上級職に志願することができます。
あるいは、別の部署での仕事や、新しい職務に移行する資格を得られるかもしれません。技術的能力を拡大する絶好の機会が得られ、現在のテクノロジー主導の労働市場において大きな強みとなります。
2. 常に上を目指すためのスキルアップとリスキリングへのニーズの高まり
最新の調査により、現在36%の組織がスキルアップを重視しており、59%の組織が今後12カ月の間に実施予定であることが明らかになっています。組織は役職にふさわしいスキルと能力を持った人材を見つけるのに苦労しています。STEMスキルの不足が深刻化する中、STEM関連の仕事につながるスキルアップやリスキリングの手段が必要になっています。
従業員の教育に多額を投資するのはリスクを伴います。投資に対する見返りとして、従業員の長期的な献身が強く求められます。企業にとって、マイクロクレデンシャルに投資するのは、従業員に必要なスキル習得を継続してもらう費用対効果の高い手段です。
従業員が常につながっている、サポートされていると感じることを企業は望んでいます。そのため、多くの企業がつながりを確保しようと、堅固な技術的枠組みやホスト型のVoIPソリューションに投資しています。組織は部門で最も必要とされるスキルにマイクロクレデンシャルを適用することができます。たとえば、サイバーセキュリティ、クラウドコンピューティング、機械学習などのスキルです。
こうした投資はすべて従業員のキャリアパスへの投資であり、彼らの満足度と定着率の向上につながります。科学技術の世界が急速に変化する中、従業員はマイクロクレデンシャルを活用してリスキリングを行うことで、最新の変化についていくことや、STEM領域への足がかりを得ることができます。こうして、企業は優秀な人材を保持し、自社に呼び込むことができるのです。
3. 採用担当者や雇用主は学位よりもスキルを重視
マイクロクレデンシャルは優れた代替学習方法であり、カスタマイズ可能なスキルアップおよびコアコンピテンシー形成の機会を提供します。スキルの不足により、雇用主は従来の学位だけが大事なわけではないと認識しはじめています。適切なスキルを持った有能な人材を見つけることが、ますます重要になっているのです。
コースは通常、短期間で柔軟性があるため、従来の学習環境では苦労していた人も習得しやすくなっています。たとえば、キャリアブレイクを取った人は、自分の専門分野の新しい知識についていけないと感じているかもしれません。とはいえ、全日制カレッジの学位取得に専念するのも難しいでしょう。マイクロクレデンシャルは、自分が仕事を遂行するのに必要なマインドセットとスキルセットを持っているということを雇用主に伝えるものです。
組織はメンタリングソフトウェアを利用して、従業員がマイクロクレデンシャル取得のために学習し、得られた知識を職務に活用するプロセスを指導することができます。正規教育を受けていないことによるスキルの不足は、メンタリングとトレーニングのスキームによって埋め合わせ、コアスキルを構築することができます。
4. 収益源の拡大
多くの大学やカレッジ、さらには企業もマイクロクレデンシャルを提供しています。このようなコースは従来の学位よりも習得しやすく、さらなる収益源を創出します。マイクロクレデンシャルを活用したスキルアップを選択する人が増え、その価値を認める雇用主も増加しており、多くの組織にとっては重要な代替的収益源となっています。
5. 教育とスキルの証明
マイクロクレデンシャルを提供している公認組織は大抵、学習を検証するレビュープロセスを設けています。これは、コース修了時の試験やデモンストレーションによって行われます。大抵の場合、コースは業界の協議会により、雇用者に求められるスキルに基づいて作成されています。多くのコースで、学習者はバーチャルアシスタントやクラウドベースの電話システムなどのオンライン設備を通じて、迅速なフィードバックとサポートを得ることができます。
こうした実証的な学習を通じて、マイクロクレデンシャルは能力を示す有効なサインとなり、レジュメが充実して、キャリア目標の達成につながります。

「マイクロクレデンシャルは、ターゲットを絞り、ニーズを重視した優れたトレーニングツールです。また、プロフェッショナルが所有するスキルと将来の仕事への適性を示し、評判を高めるのをサポートします。さらには、適切なコースを受講することで、ソフトスキル(次回イベントの準備や交渉術など)を身に付けることもできます。いずれの成果も、プロフェッショナルが自分自身を労働市場の中にうまく位置付ける上での重要な根拠となります。」 Dominic Mühlberger, Head of Learning DACH, SThree
マイクロクレデンシャルの障壁と課題
1. 変化への抵抗
マイクロクレデンシャルの領域は、従来の教育と比べて新しく、その価値の受容にはある種の困難を伴います。今なお従来の学位を必要とし、マイクロクレデンシャルによって付加される価値を認めていない組織や職種もあります。さらに、マイクロクレデンシャルのコースはオンラインで実施されることが多いため、伝統的な対面式の学習と異なり、自宅での作業が学習にもたらす影響を考慮しなければなりません。
2. マイクロクレデンシャルは「アドオン」であるという考え
マイクロクレデンシャルは、正式なものではない、厳格さに欠ける学習方法だと捉えられることがあります。そのため、マイクロクレデンシャルのコースはいまだに公式の学位の代わりではなく、補足的なものであると見なされています。
3. 裏付けとなる研究の少ない新しい領域であること
マイクロクレデンシャルは新しい手法であるため、その利点を検証するのが難しい面があります。コースの直接的な付加価値を証明する研究やレビューが存在しないのです。
しかし、私たちは人々がスキルの拡大・多様化を望んでいることを認識しています。マイクロクレデンシャルはこれを実現するための利用しやすい経路です。最新の調査によると、コロナウイルスのパンデミック以来、42%の雇用者がコアコンピテンシーを向上させる、あるいは新しいスキルを習得するために、自主的な学習を進めています。
マイクロクレデンシャルはどこで利用できるか
一般的に、マイクロクレデンシャルは以下の機関によって提供されています。
1. 企業
2. 職能団体
3. カレッジ
4. 大学
5. 組合
マイクロクレデンシャルは、マイクロ学位、あるいはナノ学位のシンプルなコースとしてオンラインで利用できます。コースの修了時にはメリットバッジまたは認定証が授与されます。また、職業上のプロフィールに、習得した付加的スキルとしてコースを記載することができます。
マイクロクレデンシャルでは、極めて多様なコースが提供されています。ニッチな技術から、広範なマネジメントやリーダーシップまで、さまざまなコースが揃っています。AIやクラウドコンピューティングの最先端ITのコースもあります。さらには、短期目標の立て方や、業務用電話番号の設定方法を教える、企業設立の基本についての起業家向けコースもあります。
マイクロクレデンシャルは高度なパーソナライズが可能です。修了までの期間が定められていないことが多く、予定に合わせて学習を進めることができます。
習得済みのスキルや経験に基づいてコースを実施することができます。コースの費用も比較的抑えられており、新たな分野でのスキル習得にも挑戦しやすくなっています。マイクロクレデンシャルを、特定の学位に向けた単位として与える教育機関もあります。こうしたことから、マイクロクレデンシャルはあらゆる人のライフスタイルに合わせられるフレキシブルな学習ツールとなっています。
結論
ここまで、マイクロクレデンシャルの概要、提供元、教育領域における役割について見てきました。スキルが不足して賃金が高騰する中、マイクロクレデンシャルは、継続教育やSTEM関連のリスキリング導入の新たなリソースとして、雇用者と雇用主の双方に大きなメリットをもたらします。
多彩なコース、フレキシブルなタイムテーブル、検証済みの学習成果により、自己改善とキャリアアップの途上にあるすべての人に、無限の可能性を提供します。仕事を続けながら、同時に新しいスキルを習得して、キャリアを向上させることができます。正規の教育リソースとして認めることへの抵抗はありますが、この領域は急速に発展中であり、多くの企業が直面しているスキル不足を補う有益なリソースであることが証明されるはずです。
著者について
Grace Lau - Dialpadの成長コンテンツ担当ディレクター
Grace LauはDialpadの成長コンテンツ担当ディレクターです。Dialpadは、バーチャルなコンタクトセンターソフトウェアを使用して、チームの連携を強化・円滑化するAI駆動のクラウドコミュニケーションプラットフォームです。コンテンツライティングおよび戦略において10年以上の経験があります。現在、彼女はブランドおよびエディトリアルコンテンツ戦略の責任者として、SEOおよび運営チームと協力して、コンテンツ作成・育成に取り組んでいます。彼女のLinkedInページはおこちら。
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