正社員以外の働き方、すなわち契約労働の人気がこれまでになく高まっています。約5,000人のSTEM専門家を対象にしたSThreeの調査によると、少なくとも10人に6人のSTEM専門家が何らかの契約労働を行っています。これは最近の傾向でしょうか?それとも長期的な傾向でしょうか?
Lawrence Doe氏(SThreeの英国シニアセールスディレクター)は次のように述べています。「需要自体は以前からずっと存在していましたが、最近特に注目を集めているのは、ハイブリッド型への移行です」 。
Doe氏によると、2000年代の高速インターネットの発展といった技術の進歩や、2008年の金融危機といった大規模な混乱により、ここ数十年で契約労働者であるコントラクターの人気は徐々に高まってきていました。
しかし、最大の変化をもたらしたのはパンデミックでした。「各企業は、ノートパソコンの支給やリモートコラボレーションソフトウェアへの投資などを通じて、従業員によるリモートワークの実現を推し進めることを余儀なくされました」 。これが契約労働への関心を高めることになったと、Doe氏は述べています。
SThreeでシニアディレクターとしてDACH地域(ドイツ、オーストリア、スイス)の管理を担当するCliff Sidhu氏は「これは世界規模の動きであり、要は柔軟性を確保するための施策です」と述べています。

「ドイツでは、パンデミック前は伝統的に自国の言語を話す労働者を雇用してきた多くの企業が、今では世界中のコントラクターに目を向けるようになりました。これは、コントラクターの活用により必要なスキルを備えた人材を獲得できることに企業が気付いたからです」 Cliff Sidhu, シニアディレクター - DACH地域
逆転や置き換えが起こるのか?
Doe氏は「不況下では、正社員の労働市場が縮小する傾向がある一方で、コントラクターの市場は安定しています」と述べています。Sidhu氏は次のように同意しています。「コントラクターの需要は安定しています。時間とともに変化するのは、成長分野や求められるスキルです」。
それでは、今後、コントラクターが正規労働者に置き換わり、最終的に正規労働者の数を上回るのでしょうか? 実際のところはそれほど単純ではないと、Sidhu氏は述べています。「コントラクターと正社員の労働市場は常に存在するものの、分野や業界での依存の仕方や程度は異なります」。
「コントラクターが正社員に置き換わるという状況は、ある分野では起こっても、他の分野ではそうでない可能性があります」と、Doe氏が補足します。

逆転や置き換えが起こるのか? Lawrence Doe, シニアセールスディレクター - UK
契約労働が拡大し続けている大きな背景の1つに、従業員にもたらす柔軟性があります。最近行われた調査によると、新しい職を検討する際に重視する要素として専門家の54%が柔軟性を挙げており、これは給与・福利厚生に次ぐ2番目の多さです。このことから、柔軟性の優先度が高まっていることが分かります。「コントラクターがどのような働き方を希望するのかがすべてです」と、Sidhu氏は述べています。
「企業には収入を優先したいコントラクターもおり、常に多くの労働をこなしています。当然、そのようなコントラクターは高額の報酬を稼いでいます。また、1年間のうち一定期間だけ働き、残りの期間を勉強や旅行といった自分のことに費やすコントラクターもいます。これが契約労働の魅力です。各自のライフスタイルに合わせた働き方を実現できるのです」。
雇用主の側にもメリットがあります。コントラクターを活用すれば、必要に応じて特殊分野のスキルを活用できるようになり、投入中心を脱して生産に移行する雇用主にとって有利となります。プロジェクト中心の考え方は、企業の効率性と活力を保ち、変化への適応に備えることができます。
運命は思いのまま
契約労働がもたらす柔軟性の別のメリットとして、臨時職員と正社員との間で行われるスキル交換が挙げられます。コントラクターは財務上の付加価値をもたらすだけでなく、自身の知識や経験を正社員と共有します。「スキルの移転です。例えば、コントラクターが正社員を直接教育することもあれば、正社員の成長に役立つ更なるトレーニングやテクノロジーの提案をコントラクターから受けることもあるでしょう。今では、コントラクターは組織の一員であると捉えられています」
コントラクターにとって、キャリア開発は「思いのまま」であると、Sidhu氏は述べています。「コントラクターの方々は、自分のキャリア、そして自分の運命を間違いなく掌握しています!コントラクターには学べることに制限がありません。学べる内容が企業や企業の経営陣や体制によって左右されることはありません。何を学ぶかは本人次第です」 。
雇用主、労働者双方の利点
独立契約労働の人気が上昇し続けていることから、ドイツをはじめとする国々でSThreeの雇用コントラクターモデル(ECM)の人気も高まっています。このモデルは、ドイツの労働派遣法であるArbeitnehmerüberlassungsgesetz(AÜG)に基づいています。
これは、比較的未熟な大卒者から、より高度なスキルを備えたスペシャリストまで、様々な経験度合いのSTEM熟練労働者に適用されます。対象となる労働者は臨時の職務に従事することを選べますが、このモデルの主な特徴として、SThreeが法律上の雇用主となり、自己の「従業員」に対して完全な責任を負います。このような責任には、継続的な報酬の支払い(休暇や傷病手当といった生産活動を行っていない期間の支払いなど)のほか、税金や保険(社会保障負担金など)といった他の雇用主のコンプライアンスに関する懸念事項などがあります。
ECMの原則により、応募者はクライアントの組織に完全に取り込まれ、正社員と同等の待遇と同等以上の賃金が保証されます。割り当てられた職務が完了すると、クライアントから応募者に無期雇用、すなわち正社員への転換の申し出が行われることも珍しくありません。つまり、安定を確保しながら柔軟性を保てるといった多くの利点があるのです。SThreeのECMサービスを通じて、従業員と雇用主の双方がそれぞれの利点を享受できます。
一部では依然として正規雇用が支配的ですが、労働者が柔軟性を求めるようになった今、契約労働の人気が高まっていくことは間違いありません。
当社のサービスについて詳しくはこちら「STEMの力シリーズ:レジリエンスの高いスキル」の記事をさらに読む

マイクロクレデンシャルは未来の仕事と学習の手段になり得るか?
マイクロクレデンシャルが労働者と組織の双方にとって有用なツールである理由について解説します。

困難下における柔軟な人員確保のためのソリューション
その時々で必要とされるSTEMスキルを持つ人員をプロジェクトに素早く投入したいという考える企業が増えています。

景気後退下においてコントラクター(契約労働者)が成功を収めるには
コントラクトベースでの仕事が一般的になるにつれて、新世代のSTEMプロフェッショナルの正規雇用離れが見られます。またこうしたSTEMプロフェッショナルに対する需要は、現在の厳しい経済状況下においても高まっています。

STEMの再教育が求職者の「チャンスを拡大」する
新たなテクノロジーの急成長により、これからの仕事では新たなスキルが求められます。

STEMプロフェッショナルの活用で景気後退を乗り切る
景気後退により雇用が不安定な状況下でも、STEMスキルを身につけている従業員は、そうでない従業員よりも雇用が安定する可能性が高くなります。