今年で7年目を迎える「科学における女性と少女の国際デー」は、科学分野において女性が果たす重要な役割だけでなく、STEM分野に存在する男女格差の解消に向けた課題を認識する重要な日です。ここでは、それぞれの分野で新しい道を切り開く、9人の女性をご紹介します。
世界的に水資源問題への関心が高まる中、国連は今年の「科学における女性と少女の国際デー」のテーマとして、持続可能な開発目標の6番目「安全な水とトイレを世界中に」を掲げました。今回で7回目を迎えるこの記念日は、科学分野において女性が果たす重要な役割だけでなく、STEM分野に存在する男女格差の解消に向けた課題を認識する重要な日です。ここでは、それぞれの分野で新しい道を切り開く、9人の女性をご紹介します。
ギラン・タドゥーン
国連の今年のテーマと足並みを揃え、水セクターの変革を目指すBanyan Water。2011年に設立された同社は、データと分析を活用したリアルタイムの漏水検知などのイノベーションを通じて水資源の節約と無駄の排除を推進しています。創業以来、同社はこの技術によって40億ガロン以上の水を節約してきました。
ギラン・タドゥーンはCEOとして、テクノロジーを通じた水不足問題の解決にキャリアを捧げています。女性労働者が5人に1人にも満たないこの業界において、彼女は多くの女性のインスピレーションとなっています。

カトリン・ヤンセン
ワクチン開発は、従来の方法では通常10年以上の期間を要します。しかし、2020年、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症の流行をパンデミックと宣言してからわずか9か月後に、英国でPfizer-BioNTech製ワクチンの緊急使用が承認されました。
Pfizerのワクチン研究開発責任者であるカトリン・ヤンセンは、世界を「平常」に戻す上で重要な役割を果たしました。ヤンセンは、1990年代にMerckでHPVワクチンの開発を主導し、免疫学の分野に大きく貢献した実績の持ち主でもあります。

Jennifer Doudna and Emmanuelle Charpentier
2020年、フランス出身のエマニュエル・シャルパンティエとアメリカ出身のジェニファー・ダウドナの2人の生化学研究者が「CRISPR」というゲノム編集の画期的な手法を開発し、ノーベル化学賞を受賞しました。この技術は「遺伝子のハサミ」とも呼ばれ、DNAを極めて正確に編集することができます。
ノーベル委員会によると、この技術は2012年の発見以来、「生命科学に革命的な影響」を与えてきました。「がん治療の進歩に貢献しており、遺伝性疾患を治療するという夢を実現する可能性がある」と言われています。また、植物学の分野では、世界の飢餓との闘いに不可欠なより丈夫な植物の開発への応用が期待されています。

アン=マリー・イマフィドン
アン=マリー・イマフィドンは、若干11歳で数学とコンピューターサイエンスのAレベルを修了し、20歳になる前にオックスフォード大学で修士号を取得した天才児です。金融機関とハイテク企業で数年間働いた後、STEM分野の男女格差に取り組むことを決意し、2013年にStemettesを共同設立しました。
Stemettesは、STEM分野でのキャリアを目指す少女や若い女性を支援することを目的に、講演会やメンタリングプログラム、オンラインプラットフォームを提供する社会的企業です。Stemettesは設立以来、6万人近くの女性を支援してきました。

ジョイ・ブオラムウィニ
アルゴリズムは、今では日々の生活に必要不可欠な存在ですが、その役割の拡大に伴い、ある問題も浮上しています。歴史的なバイアスによって形成されたデータセットでアルゴリズムを学習させた場合、そのバイアスが増幅されます。その結果、アルゴリズムによる意思決定が人種や性別に基づく差別を生む事態が生じています。
この問題に取り組んでいるのが、ジョイ・ブオラムウィニです。MITの研究者であるブオラムウィニは、MicrosoftやIBM、Amazonなどの企業が開発した顔認識ソフトを対象とした調査で、肌の黒い女性ほど認識精度が低いことを実証しました。その後、アルゴリズムの偏見の是正に取り組むAlgorithmic Justice League(AJL)を設立し、現在は著名なテック倫理学の啓発運動家として活躍しています。

シンシア・ケニヨン
長年、生物学者たちの間では、老化は避けられない生物学的なプロセスであり、制御することは不可能であるという考え方が一般的でした。しかし、シンシア・ケニヨンはこの通説を覆してみせました。1993年、ケニヨンは回虫のDNA情報を1字変えるだけで寿命が2倍延びることを発見し、老化と遺伝の関係を明らかにする画期的な研究成果を発表。
以来、ケニヨンは分子生物学、特に老化と加齢疾患について研究するバイオジェロントロジー(老化学)の世界的権威の一人とされています。2014年からは、Googleの支援を受け「人々がより長く、健康的な生活を送るための方法」の発見を目指すバイオテクノロジー企業、Calicoでアンチエイジング研究部門副社長を務めています。

ラケル・ウルタスン
完全自律走行車の実現は、過去10年間にわたり世界の大手企業が取り組んでいる課題のひとつです。世界を変える技術である一方、特に安全面での懸念が残っています。
ラケル・ウルタスンは、この業界の最前線で、AIを利用して自動車の「認識能力」を向上させる方法について研究しています。Uberの研究部門、Uber ATGでチーフサイエンティストを務めた後、2021年に自身の会社Waabiを設立。機械学習に特化したアプローチで、多くの投資家を惹きつけています。

ペギー・ウィットソン
2002年に最初の宇宙ミッションを遂行して以来、記録を塗り替え続けているペギー・ウィットソン。2007年には国際宇宙ステーションで女性初のコマンダーを務め、その10年後には女性の宇宙連続滞在期間289日間という最長記録を更新しました。宇宙へ行った女性としては最年長でもあります。
2018年にNASAを退職した後、ウィットソンは世界初の民間商業宇宙ステーションの建造を目指すAxiomのコンサルタントに就任しました。57歳のときにNASA最後の任務を終えたウィットソンは、世界最年長女性宇宙飛行士としての記録を保持していますが、2023年にAxiomの代表としてISSを再訪することを発表しています。

ここではご紹介できませんでしたが、世界のSTEM分野で目覚ましい活躍を遂げている女性は他にも大勢います。着実に変わりつつあるものの、この業界は依然として男性中心であり、解決すべき課題がまだ多く残っています。
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