日本の人材確保・働き方における意識の変化
2021年末にグローバル規模で実施した調査では、STEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)分野において特に、コントラクター(業務委託やハイクラス派遣など正社員以外での人材獲得)への需要の高まりが見られました。
一方、日本の人材市場は欧米諸国と比べて独特な点も多く、伝統的に正社員雇用が採用企業にとっても求職者にとっても優先度の高い選択肢となってきました。そのため、同様のトレンド、すなわちコントラクターへの需要の高まりが日本でも見られるのかどうかを明らかにするため、日本でも独自の調査を行いました。
以下では、当調査から得られた結果を基にしたインサイトをご紹介しています。
調査について
この度、2021年末にグローバル規模でSTEMプロフェッショナルの方々を対象に行った調査と、2022年9月に日本のSTEM分野で活躍する採用企業様およびSTEMプロフェッショナルの方々を対象に行った調査結果を、「働き方の未来 – 正社員至上主義から多様な働き方へのシフトは見られるのか?」としてレポートにまとめました。
グローバルの調査は、米国、英国、ドイツ、オランダ、そして日本を中心とする世界各国で5000名以上のSTEMプロフェッショナルを対象として行われました(当調査単独の結果をまとめた英語のレポートはこちらからご覧いただけます)。
日本での調査は、800名以上のSTEMプロフェッショナル(多くがITプロフェッショナル)を対象とした調査に加え、IT、テクノロジーからライフサイエンスに至るまで、STEM分野における採用企業からも聞き取りを行いました。
概要をまとめたインフォグラフィクスはこちら
日本での調査結果から見られた主なトレンド
調査結果から見られた主なインサイトを以下にまとめています。日本での調査結果とグローバルでの調査は、同様のトレンドを示しています。
STEM分野においては特に、スキルを持つ人材を獲得するための手段として企業のコントラクター(正社員以外の人材獲得)へのニーズが高まっています。当社の調査に参加したSTEM企業の 83%が、現在すでにコントラクターを活用している、もしくは今後活用したいと回答しています。
IT業界やテクノロジー分野を中心に、日本でも多くの企業が従来の終身雇用から脱却し、ジョブ型雇用への移行が進んでいます。また、新型コロナウイルスによるパンデミックは、変化や危機、そして不確実性に迅速に対応できる企業であることが、今後ビジネスの世界で生き延びていくための重要な要素であることを改めて明らかにしました。日本でもプロジェクトベースの仕事の進め方がますます一般的になる中、より柔軟かつ迅速に必要な人材やスキルを獲得できる手段として、コントラクターへの需要が高まっています。
コントラクターへの需要の高まりに加えて、高いスキルを持つ求職者もコントラクターとしての働き方に対して以前よりもオープンになっている様子が見られます。日本のSTEMプロフェッショナルに向けた調査では、参加者の74%が現在正社員として働いているものの、全体の75%がコントラクターとして働くことを検討すると回答しました(すでにコントラクターとして働いている人を含む)。
以前は正社員ではない契約ベースでの仕事は、“低スキル・低収入”と考えられていましたが、現在ではより多くの機会や大規模なプロジェクトに参加するための機会としてポジティブに捉える人が増えており、認識の変化が見られます。
スキルを持つ人材の獲得競争は熾烈を極めており、IT業界のように人材不足が顕著な業界ではなおのこと、適切な人材の確保はどの企業にとっても大きな課題となっています。また、スキルを持つ求職者は、自身の市場価値を認識しており、給与や福利厚生は、求職者の仕事選びにおける最優先事項となっています。
また、もう一つの興味深いインサイトとして、求職者は柔軟な働き方を特典ではなく、当然のものと認識し始めていることが挙げられます。一方、調査に参加したSTEM企業の65%が柔軟な働き方やリモートワークを「会社の魅力的なアピールポイント」であると述べており、求職者とSTEM企業の認識にはギャップが見られます。
近年、ESG(環境、社会、ガバナンス)やSDGsへの意識が非常に高まっており、若い世代において特に、仕事を通じて社会や地球にポジティブな影響を与えること、そして明確な目的(パーパス)を持った組織で働くことを以前よりも重視する傾向が見られます。
高いスキルを持つ求職者は、仕事を通じて実現したいことについて、以前よりも多くの選択肢を持っており、調査の参加者の83%が、働く先の企業を選ぶ際に、企業のESGへの取り組みや多様性推進、企業文化は非常に重要、もしくは重要と回答しています。
IT人材に代表されるSTEM人材は需要が供給をはるかに上回っており、求める人材を見つけて採用するのは決して簡単ではありません。STEM企業の81%が、採用における最大の課題として、プロジェクトやタスクを完了するために必要なスキルを持つ人材が見つからないことを挙げています。この結果から、企業が求めるスキルや経験に当てはまる要件を持つ人材を見つけるのは決して簡単ではないことがわかります。
一方、日本での調査に参加した高いスキルを持つ求職者の89%が、現在と異なる業界へ転職することにオープンであると回答しています。優秀な人材を確保するためには、同業界や同業種での経験そのものを必須要件とせず他業界や他業種の経験を持つ人材も視野に入れ、より広い人材プールへとアプローチをかける必要があります。
調査結果レポート
その他の調査結果やこれらの主なトレンドについてさらに詳細な分析と解説を行ったレポートのフルバージョンは以下よりダウンロードいただけます。
需要の高い求職者は、キャリアのあらゆる段階で自分のニーズが満たされることを求めています。そして、未来志向の企業は、競合他社に打ち勝つために彼らが持つスキルを獲得する必要があります。当レポートを、今後の採用戦略やキャリア形成へとぜひお役立てくださいませ。
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